派遣OLの退屈な毎日

30歳派遣OLの日常を日記風に書きます

映画

今流行っているイタリアが舞台の同性愛映画を観た。久しぶりの映画館で、映画に集中したかったのに、最近の私生活の嫌な事ばかりが思い出されて映画の内容に関係なく三回泣いた。

映画は退屈で、何がそんなに皆の賞賛を浴びているのかよくわからなかった。愛を綺麗に描く映画は偽物に見える。彼の手に収まるアプリコットは随分と汚かったし、イタリアの景色も惹かれるものがなくて、私は一生イタリアの地を踏まないように思えた。


連休は心が何も休まらなかったから、この抑揚の控えた映画を観ている最中は、考える時間もなかった自分の人生のこれからについて悲観的になったし、こうやって何か別の世界を見て探しても、これから先自分が何をしたいのかよくわからないという確認だけをして終わった。例えば今年の夏、私は何の仕事をしているのか、何が好きで何が嫌いなのか、何時に寝て何時に起きるのか、それすらよくわからない。そういう人生をずっと歩んでいて、もうはやく退屈な世界から目をさましたいと思うだけだった。映画の中で綺麗に描かれた美しい地球上の景色を見ても、明日を生きていくための特別な気持ちは湧かなかった。


都内に住む友人が満開に咲いた桜の写真を送ってきた。あちらではもう桜が見頃らしい。

昔は三月末から四月にかけては、終わりと始まりという雰囲気があって、妙な感情が沸き起こることが多かった。風は冷たくても日差しは眩しくて、どこか悲しかった。今はもうそういう気持ちが起こらなくなって、学生という身分の頃から随分遠くまできた気がする。

皆が当たり前に学生という殻を脱いで社会に溶け込むのを見た。好きなデザインやアートについて語り合った友達もいつのまにか子供を産んで自分が子供でいるのをやめた。私にはそれがわからなかったし出来なかった。でも私も昔のような春の悲しみは感じなくなってしまった。今はただ、そうやって私たちが、私たちという幻想で無くなってしまった事が悲しい。

愛と金

結婚しないのかとか、彼氏はいないのか、というのをどこにいても決まって聞かれる。もうずっと彼氏もいないし、結婚する予定もないと言うと、そこで話が終わることもなく、そういう嘘なんでしょうとか、同性が好きなのかとか皆して私と何かを結びつけたがる。

一晩限りの恋愛でもいいからした方が良いと言ってくる人がいるけれど、そこまでして人と結ばれたいというのは一種の病気のように思う。私は愛が欲しいけれど男性は愛をくれないし愛の代わりに満たしてくれるようなお金もくれない。男性の瞳を見ると、決まってみんな汚れている。嘘の愛ほど汚いものはない。わざわざ自分から汚いものに手を差し込んで、それでとうして好きになれるというのだろう。

最初で最後の恋人

大学生の時初めて彼氏が出来た。同じ学科の人だった。女子校育ちで男性との距離の取り方がわかっていなくて、何かの話題でご飯を作りに行ってあげるよと言ったら、男の家に簡単に行くものではないと怒られた。それで彼の家には一度も行く事がなかった。

10代ですっかり情緒不安定が出来上がっていた私が、闇の底へ落ちそうになる度に手を取ってくれた。ありがたい存在だった。

一方で彼が極度に怒る性格で一緒にいるのが怖かった。何でそんなに怒るのかもわからなかった。私が携帯で見た占いの結果について同意を求めたら、突然髪を掴まれて怒鳴られた。びっくりして何て怒鳴っていたのか全く思い出せない。あまりにも怖くて気がついたら泣いていた。その後の彼の行動もよく思い出せない。

彼の不機嫌が酷く怖かった。壁を叩いたり、自転車を蹴り倒したり、おまえはダメだと冷たくされたりした。どうすればいいのかわからなくて気がついたら私は心が疲れ切っていた。

ある夜電話がかかってきて、もう別れようと言われた。付き合い始めて3年がたっていた。やっと解放されると私は安堵した。どうすれば別れられるのか、それすらよくわかっていなかった。


それから一度も恋人ができた事がない。男の人が近づいてくると、最初の彼氏の沢山のことが思い出されて緊張して警戒する。恋愛というのがとても大変な事に思える。不機嫌な彼に縛り付けられている、今も。


幼稚園卒園式

幼稚園卒園式の日、クラスの教室の後ろの壁に、色とりどりの色紙で切り取られた風船が沢山飛んでいた。先生が用意してくれた装飾だった。

風船はクラスの園児達が旅立って行く小学校ごとに作られていて、学校の名前とその学校に入学する園児の名前が書いてあった。

当然地域の幼稚園なので、近辺にある小学校の名前ばかりで、風船にも複数の名前が記されていた。主な学校の風船には園児の名前がぎっしり詰まって、名前だらけになっていた。


卒園式の後、沢山の園児が母親と手を繋ぎながら自分の名前を探して、誰それと同じ小学校なんだと盛り上がっていた。

私は、私の行く「みなみしょうがっこう」の名前と私の名前だけが書かれた風船を見つけた。卒園と共に遠くに引っ越す事になっていたので、皆の風船には入らなかった。母が「1人だけになるねえ、頑張らないとね」と言った。私はこの時「1人」という意味を強烈に理解した。沢山の名前が入った風船たちに私は入る事ができず、私は私1人で新しい場所に行かないといけない。同じ小学校だと笑い合ってる子達の横で、もうあの子達と私は違うのだと思った。私はひとりだ。

そして私は1人で空に飛び立った。


14歳

14歳ぐらいの子みたいと言われた。

昼間はあんなに眠いのに夜になるとすっかり目が覚めてちっとも眠れないというのをもう10代の頃から続けている。

クラスの子達が楽しそうに笑っているけど何が楽しいのかわからない。今も会社の女の人たちの雑談はとても退屈な内容でつまらない。

だって何も変わってないもの、と思う。毎日が退屈で、楽しい事もなくて、誰も信用できない、それはずっと続いてる。

だから、時々思い返して、いつまでこんな辛い思いして生きなきゃいけないんだろうとぼろぼろと涙が出る。それを10代の頃から繰り返してる。

怖い夢

誰か悪い人が家に来ようとしてる。二階にいる私は家の玄関の鍵を閉めにあわてて一階へ降りる。「鍵をかけなきゃ」という強烈な焦りが夢の中で充満する。玄関の鍵をかける。窓が開いてるかもしれないと窓の鍵をかける。悪い人はすぐ外にいる…という夢を最近何度も見る。見た後に起きると、夢の中で緊張していたせいかどっと疲れていて全く寝た気になれない。

私の夢はいつも非現実的で、強烈なものは子供の頃からずっと覚えているけれど、何かから逃げる夢が殆どを占める。妹を抱えて、B29から逃れようと狭い裏道を走る夢、駅で大量に発生した虫が溢れて家の近くまで流れてきたから、皆で高い山の方へと逃げる夢、悪い組織に変な注射を打たれそうになって森の方へと逃げる夢。森の中にある空き家に隠れようとしたけど見つかって、畳の上で取り押さえられて注射器が腕にささるところで起きた。

いつも何に怯えてしまってるんだろう。